2013年5月17日金曜日

内田貴先生の講演(2013年5月15日)について1

 5月15日、大阪弁護士会で内田貴先生による民法(債権関係)改正についての講演会が開催された。民法改正の中間試案についての説明である。

 今回取り上げられたテーマは、民法の現代化にかかるもの(消滅時効、法定利率、債務不履行による損害賠償ー金銭債務の特則、保証、信義則等の適用にあたっての考慮要素、約款)、及びわかりやすい民法とするためのもの(暴利行為、錯誤、損害賠償の範囲、契約交渉の不当破棄、契約締結過程の情報提供義務、事情変更の法理、不安の抗弁権)と多岐にわたった。
 
 消滅時効の現代化とは、職業別の短期消滅時効の規定が現時点で合理性を欠いているので廃止する、消滅時効10年を短期化する、ということである。
 職業別の短期消滅時効の廃止についてはあまり異論はないと思われるが、民事の消滅時効10年は現代社会にそぐわないほど短いのだろうか?
 個人は弁済の証拠を10年も保管していない、支払った後10年も領収書を保管しているか、と仰るのだが、企業が大量の書類を長期間保管するのが負担だとしても、個人は大切な書類は捨てないし、捨てていなければ持っていることが多いと思う。誰のための現代化だろう?
  時効の中断の用語を更新に変更することは、わかりやすい民法の方に分類される事項だろう。
  時効の停止事由に、協議を行うとの書面による合意があったときは、合意から1年、協議の拒絶が書面で通知されてから6ヶ月は時効が完成しない、というのが加わった。
  不法行為の消滅時効の長期20年を除斥期間ではなく時効とする。20年を除斥期間とした最高裁判例を読んだときの衝撃は20年ほどたった今でも覚えている。除斥期間の壁にはばまれてきたのは戦争による被害の補償を求める裁判がほとんどだったのではないだろうか。今更、との感慨はあるが、今からでも立法によってきちんと手当をしておくことには賛成する。

 法定利率の現代化とは、現在の民事法定利率5%が高いので引き下げる、というものである。銀行に預金するより 有利な率なので、訴訟の引き伸ばしがはかられている、と仰る。私の知るかぎり、遅延損害金を多く手にするために訴訟を引き伸ばした例はない。周囲の弁護士に聞いてもそんなことは見たことがない、という答えなのだが、内田先生は弁護士の中には遅延損害金のために訴訟が引き伸ばされている例を知っているという人がいた、とのこと。それが本当だとしても、そんな稀なケースのために法律を改正するとは思えない。おそらく別の理由があるのだろう。

 金銭債務の特則の現代化とは、法定利率を超えた損害を求められるようにすることと、不可抗力免責を認める、ということである。法定利率を引き下げることへの手当と、大規模な送金障害への対応だろう。メガバンクの送金システムのプログラムの不具合というのも不可抗力となって、着金が遅れたことの損害は債権者が負担するのだろうか?
 

0 件のコメント:

コメントを投稿