2014年4月21日月曜日

不安の抗弁権

不安の抗弁権という法理が存在すること、それが信義則の一場面であること、については異論はないだろう。

存在する法理は明文化が望ましい、という理念に基づいて、今回の改正においても議論の俎上に上っている。

この法理の効果は、契約において引き受けた先履行義務を履行しないことを認めるとものであり、この抗弁を行使すると取引先の倒産を引き起こしかねない。
そのため、要件については種々議論がなされている。

先日、大阪弁護士会の委員会で不安の抗弁権の要件の議論をした際、最後に、「これ任意規定だよね」という指摘がなされた。その瞬間私はかなり混乱した

任意規定だとすると、契約で排除することが可能となる。
契約当事者の衡平のために信義則に基づいて認められた権利が任意規定となる、という意味は何だろう?
契約において、本契約の解釈、履行においては信義則を排除する、という契約条項は有効だろうか?
より限定して、本契約の義務の履行において、不安の抗弁権の主張はしてはならない、という契約条項は有効だろうか?
本契約の義務の履行において、甲は不安の抗弁権の主張はしてはならない、という条項なら?

不安の抗弁権が行使されるのは、相手方の信用状態が悪化している場面であるから、たいていの場合、行使されるのは経済基盤の弱い中小企業だろう。
契約において自己に有利な条項を入れることができるのは、交渉力の強い側である。
任意規定だとして、立場の弱い側が、不安の抗弁権を入れないでくれということは可能だろうか?対等の当事者同士だとしても、このような要求を出すと、契約時から、商品受け取っても支払いができないこともありうる、と言っているようで、よほどの交渉力がないと、こんなことを言っただけで取引相手に逃げられそうな気がする。

任意規定だとしても排除はむつかしいのではないか?



2014年4月19日土曜日

著しい事情の変更による解除

事情変更が改正議論で生き残っている。
ただし、生き残っている議論では、効果は「解除」のみ。

事情変更の法理が使われる場面では、解除ではなく契約改定の方が有用だろうということに異論は聞かない。
しかし、合意による契約内容の変更ができないときに事情変更によって契約改定を権利として認めるとすると、誰が、どうやって「妥当な」契約内容を決定するのか、という問題が生じる。

そういった事情もあって、今回の改正では契約改定については明文化せず、とりあえず解除のみ明文化する方向となりつつあるようである。

存在する法理なのだから、書かないよりは書いた方がいいだろう、という理由のほかに、事情の変更による解除を権利として認めておけば、解除されるよりは契約改定の方がましと考える当事者が交渉の努力をするのではないか、という期待もあるらしい。